考察〈会社にて〉

同期の桜が散ったから、夏
些細な変化は時計によく似ている
受付の女の子は
朝からずっと
体温計を口に加えたまま
お客さまの顔を忘れ続けている
(ところで、その娘の名前が思い出せない)
喫煙所で
部長が吐いたため息を
課長が吸い込むと
僕の口からため息が漏れた


会社の七不思議はすべて
産業スパイに盗まれてしまったから
この会社は今日も
どこか遠い国の
南の島に似ているような気がする


定時になり
受付の女の子がタイムカードを押す
36度2分の安心と絶望