考察〈駐車場にて〉

霊安室には
色とりどりの車が安置されている
存在とは形ではなく
温度で定義されるものらしい


すでに
どんな夏の思い出も
語ることのない麦わら帽子の穴に
誰かがキーを差し込む
ギアをバックに入れたまま
一人またひとりと
この場所から去っていく


存在を失った空間での
ここではない何処かへの旅路
世界はいつだって
世界のすぐ隣にある
それは
そんなに遠いところ
じゃないのかもしれない
けれど
どれだけ速度を上げたとしても
僕らはその場所へ
もう
たどり着くことはできない