今日、産まれたきみへ

きみは激しく泣いていた
初めて背負う肉体の重さと、
もう止まることのない時間の速さに怯えて
予想もしていなかった祝福と、
手荒い歓迎の痛みに驚いて
きみは激しく泣きながら産まれてきた


そんなきみも
やがて
今日をしっかり忘れるだろう
その涙が乾いたとき
一人できちんと
おしっこができたとき
当たり前だ、という顔をして
上手に立つことができたとき
今日をしっかり忘れるだろう


でも忘れないで欲しい
きみもいつか
静かに
口をつぐむ日が来るということを
残される者のため、
それから始まる者のために
泣き声と同じだけの沈黙をたずさえて
私たちは生きているということを
忘れないで欲しい


今日、動き出した
すべてのきみの時間に
幸あれ